尹雄大

ある意味で、滑らかに話せる人というのは、独自の言葉でしゃべる試みとは無縁だから可能だとも言える。 ** みんなと同じという独自性のなさは、自分という存在の凡庸さを思わせる。けれども、そのように自らを卑小だと思ってしまうことそのものが、社会が期待するような傷つき方や憤懣を育む文法のなせる技だとしたらどうだろう。 ** この島に住んでいると感じるのは、絶え間なく「普通」についての教育を受け続けていることだ。脱稿やメディアに限らず、僕らが普通だと信じてやまない価値を参照し、その通りに行動することによって「普通」は無自覚に学習され続けている。その教育の結果、もたらされるのは「同化」だ。 ** 教えられた通りの考えを身につけ、それによって善し悪しでジャッジする。それを普通の感性と言うのであれば、いずれは新しい出来事が起きても、従来の考えの内に収めることに満足を覚えるだろう。だが、それとは別の道がある。教えられたことをもとにして独自に学び、自らを育てていく。そこで初めて自立に向けた歩みが始まる。